これから簿記を学習し始める人に向けて、独学の学習方法をナビゲートするとともにオススメのテキストや教材など、合格に向けての情報をご紹介します。
簿記2級は経理の職務において必要とされる資格であり、その需要は常に途切れる事はありません。そのため、人気の資格として毎年多くの受験者が簿記2級を学習しています。しかしながら簿記2級は3級と異なり、非常に難易度が高い資格試験です。これを独学でとるならば「自分に合った正しい教材」と「徹底した学習スケジュール」が重要です。
ええっ!?「非常に」難易度が高いんですね…泣
どの資格もそうじゃが、正しい対策をしっかりすれば合格できるぞい!
本記事では独学で日商簿記2級の学習を始める方に向けて、学習方法を紹介するとともに、独学者におすすめのテキストも厳選して紹介いたします。
簿記2級では、商業簿記と工業簿記をバランスよく学習する必要があります。そのため、簿記2級の全体的な戦略をここから解説いたします。
簿記2級について
はじめに、簿記2級の試験科目と学習時間を紹介します。
簿記2級は商業簿記と工業簿記の2科目を90分で解く試験です。問題構成は、次の通りです。
- 商業簿記…第1問、第2問、第3問の3題(60点満点)
- 工業簿記…第4問、第5問の2題(40点満点)
商業簿記の分野では、簿記3級の知識に加えて、細かい計算が問われます。さらに、新たな論点も登場します。
工業簿記の分野では、製品を製造するときにかかるコストを計算するなど、工業簿記の基礎スキルが問われます。
商業簿記と工業簿記をあわせて、100点満点中70点以上で合格となります。合格率は20%前後です。従来よりも、商業簿記の難易度が上がっています。
簿記2級に合格するための学習時間は、300時間前後、期間は5ヵ月程度です(簿記3級合格者の場合)。工業簿記と商業簿記を、バランスよく学習する必要があります。
簿記2級の学習準備
次に、学習準備に必要な事項を紹介します。
テキストの選び方
テキストは、解説が丁寧なのものを選んでください。簿記2級はそもそもボリュームが多いので、文章量が少ないものは避けてください。細かい解説が省かれている可能性があります。
- 最新版であること
- 質と量を重視し、厚みがあるもの
- テキストと練習問題が、シリーズ出版されているもの
- 何冊も買わないこと
- 色使いがシンプルなもの
本記事の後半に、おすすめのテキストを紹介しています。是非ご覧ください。
スケジュールの立て方
試験日から逆算して、スケジュールを立てましょう。
学習期間が5ヵ月ある場合(推奨)には、2ヵ月をテキスト中心のインプットに、3ヵ月を本試験形式の問題集中心のアウトプットに振り分けられるとよいでしょう。
また、専門学校等のホームページに簿記講座のタイムスケジュールが載っていますので参考にしてみるのも良いかもしれません。
個人差はあるが、最低でも5ヶ月の勉強時間は欲しいところじゃ!
情報収集の方法
専門学校や資格スクール等のホームページで、次の情報をチェックすると良いです。
模擬試験・予想会情報
模擬試験や直前予想会は、無料で申し込めるスクールがあります。いくつかの模試に参加すれば、どれかは予想的中する可能性があります。
公開ガイダンス情報
ホームページ内に公開ガイダンス動画がある所もあるので、探してみましょう。簿記検定の概要、試験傾向などがまとめてわかります。
このように、専門学校や資格スクール等のサイトを上手に活用する事もできます。興味のある方は使ってみても良いでしょう。
簿記2級、独学での学習の進め方
では、日商簿記2級を独学で合格するため、学習の具体的な方法を解説します。
テキスト学習
テキストは、しっかり読み進めましょう。テキストに書かれていることは、すべて大切です。
苦手だと思う論点は、付箋(ふせん)を貼って後から繰り返し読めるようにします。何ヵ所でも付箋を貼って大丈夫です。見直しが済んだところは付箋を剥がしていきましょう。進度が目に見えるので、モチベーションを維持できます。
同時に、簿記2級の学習中にも簿記3級のテキストは見返せるよう手元に置いておきましょう。抜け落ちた知識などの補完になると思います。
練習問題集
テキストと同じシリーズの練習問題集を解きます。テキストに含まれている例題や練習問題も含め、テキストの論点に沿って学習してください。その際、一つ一つ理解して進めることが大事です。
本試験形式の問題集(過去問題集)について
これから簿記2級を受験する方は、過去問題集という名称の書籍は見つけられないと思います。おそらく、各資格学校が出版しているものは「問題集」「直前対策問題集」などのタイトルになっていきます。
CBT試験にともなった変化
昨年度からのCBT試験導入に伴い、主催団体の日本商工会議所が過去の本試験内容の複製やSNS流出をしないよう、2021年3月に受験者向けに発信しています。
そのため、過去問題集にあたるものとして、新たに販売されているものは、過去の本試験問題をベースにしたものに変わっています。著者がオリジナルで研究・分析・予想し作成した、本試験形式の問題集ということです。
ここで解説する本試験形式問題集は、過去問題集と同じポジションで使うものと考えてください。
本試験形式問題集の解き方|何度も解く
本試験形式の問題集は、3回は解きましょう。
1回目は、1問解いたらすぐに解説を読みます。解けた問題も必ず解説を読んで、正しい解き方か確認します。
2回目は、時間を計らず、焦らずにしっかり問題文を読んで解きます。
3回目は、A4の計算用紙をつかって、時間を測って解きます。
本試験形式問題集は移動時間ではなく、できれば机のある場所で解いてください。簿記は、読んだだけではマスターできない類の学習で、暗記学習ではないからです。
何度も繰り返すことで、少しずつ解き方がスッキリしてきます。はじめは、計算用紙が足りなくなったりしますが、量をこなすうちにシンプルな下書きで解ける様になります。
計算用紙は、本番でも1枚しか使えません。次の項目で特にスペースをとられますが、練習を重ねて対応できるようになります。
- 商業簿記の利息計算や減価償却のタイムテーブル
- 商業簿記の決算整理仕訳や連結決算
- 工業簿記の勘定連絡図やグラフ
上記の様な様々な問題を、1枚の計算用紙に書かなければなりません。シンプルな下書きは合格の要素でもあります。本試験形式問題集は、計算用紙のバランスを考えて、取り組んでください。
繰り返し頑張るしかない!!やるぞ〜!
模擬試験で自分の戦略を練る
直前対策として模擬試験を受けましょう。模擬試験はメリットは次の通りです。
- 緊張感に慣れる
- 資格専門学校が研究して作成した予想問題を解ける
- 誰でも申し込める、ほとんどのスクールでは無料
- 本試験で類似問題が出る可能性がある
模擬試験では、次の事を意識してください。
第4問の工業簿記から解くかの判断を行う
苦手意識のある論点なら、後回しにします。得意な論点なら、先に取り組み確実に得点源にします。
第1問の仕訳から解く場合、後回しにする問題を判断する
時間と計算用紙のスペースをすさまじく奪っていく問題があります。仕訳から解くことにしている場合には、難しそうな問題は後回しにします。
いろいろとコツはありますが、得意と苦手の区別ができなければ、先に解くか後に回すか判断できません。とにかく沢山の問題を解いて練習を重ねるしかないのです。簿記に近道はありません。
独学慣れしている人の特徴
前述したように、テキスト→練習問題集→本試験形式問題集(過去問題集)の順序が一般的。しかし、独学慣れしている場合は本試験形式の問題全体を見渡してからインプットをする傾向があります。
独学派に共通する学習の進め方を、参考までに紹介します。
- 過去問をみて、どのような問題文なのかを見渡す
- テキストをひととおり読み流し、全体像を把握する
- テキストを熟読、しっかり理解できるような読み方をする
- テキストの例題は、とばさない
- 練習問題集と本試験形式問題集(過去問題集)を何度も解く
独学が上手な方は全体像を把握することを常に重視しています。
簿記2級の「独学」学習方法
ここで、簿記2級における独学のポイントをお伝えします。
商業簿記と工業簿記のバランスに注意する
独学者の場合、商業簿記と工業簿記の学習バランスがとれていない方が多く見受けられます。
例えば、簿記3級の延長である商業簿記に偏りがちであったり、工業簿記に慣れず捨て問題をつくりがちであったりする癖がよく見られます。あやふやなまま、別の論点に進んでしまう人が多いので、注意しましょう。
資格スクール等に通う生徒であれば、確認テストを論点ごとに行います。独学の場合も、テキストの設問や小問題を飛ばさずにしっかりと取り組みましょう。難しい問題でもコツをおさえ、できるようになるまで繰り返してください。
学習ポイント
簿記2級は、網羅性とスピード・正確性どちらも要求される試験です。
網羅性
テキストの全範囲、問題集すべてを網羅的に学習しましょう。簿記検定は、膨大な範囲のなかから一部の論点がピックアップされます。ヤマをはるような試験ではありません。
同様の理由で、捨て問題も作らないことが重要です。どうしても理解できない論点をとばして学習すると、合格率を下げてしまいます。
スピードと正確性
90分という短い時間に5つの問題を解くので、正確かつスピーディに解き進めなければ合格できません。理解していないと、時間が掛かってしまいます。問題集に何度も取り組み、正確性を向上させていきましょう。
工業簿記を味方につける
商業簿記は、難問が出題される傾向があるので、高得点を狙うのは難しいでしょう。工業簿記で、40点満点をとるつもりで学習することがポイントです。合格者の多くが、工業簿記に強くなれば合格に近づくと実感しているとのことです。
工業簿記では、練習したものと類似した問題が出題される傾向があります。標準原価計算や直接原価計算、CVP分析など、解き方さえマスターしていれば本試験で得点源になります。
新論点対策
日商簿記検定は、実務に即した検定であることから、会計基準の改定などがあれば、翌年度の試験に登場してくることが多いです。
出題区分の変更や、大幅な改定などの新論点は、高確率で出題があるので対策しておかなければなりません。
ただ、最新版のテキストを購入すれば網羅されていますので、特に対策の必要はありません。
おすすめのテキスト
最後に簿記2級を独学で合格する際にぴったりのオススメ教材を紹介します。
簿記2級は学習内容が難化しています。独学でも対応できるよう、これまで解説してきたポイントをおさえたテキストが必要です。
テキストもしっかり見極めて、自分に合ったものを選ぶのじゃ!
テキストは理解優先のものを選ぶ
テキストは自分が「理解できるもの」を選びましょう。本記事では理解に特化した教材を紹介しています。
イメージで攻略!シリーズで理解を深める
日商簿記2級で大切なのは理解できない部分を無くすということです。曖昧な理解のまま学習を進めると後々後悔してしまいます。しかし、図が無い説明だけの難しすぎるテキストで理解しようとすると非常に時間が掛かってしまいます。
そのような問題を解消してくれるのがこちらの「イメージで攻略 わかる! 受かる!」シリーズのテキストです。こちらの教材にはテキストと問題集も含まれているため、アウトプットと同時に学習を進めることができます。そのため、記憶の定着力も理解力も、他の教材と比較して非常に良いです。
簿記2級の勉強を始めようと思っている方はまずこの2冊を購入してみましょう!
信頼と実績の大手予備校テキストを選ぶならTACの「合格テキスト」
個人が監修しているものよりも、大手予備校講座が監修しているテキストを選ぶならば、一般にも販売されているTACの合格テキストがオススメです。こちらのテキストは評判も良く、改定を何度も挟んでいるのでテキストが洗練されています。
TACテキストのにもイラストや図解で効果的かつ講師から直接教わっているように学習できます。論点ごとに基本の例題ですぐ確認できるといったポイントもあり、多くの受験生から長年支持されています。
こちらも商業簿記と工業簿記2冊あるので、片方だけ買わない様に注意してください。
練習問題集
テキストである程度理解を深めたら次に行うのは「問題演習」です。テキストの例題などはテキストに沿って解いていくものが多いため、その時は解くことができます。しかし大切なのはその記憶が定着しているかどうかです。それを、問題演習の教材を用いて確認します。
みんなが欲しかった! 簿記の問題集シリーズで模擬試験まで完璧に
こちらのみんなが欲しかった!簿記の問題集は第10版まで継続して改訂されており、非常に人気の簿記問題集のひとつです。本試験を徹底的に分析した良問が厳選収載されていて、かつ細かい仕訳処理も丁寧な解説がついています。理解が曖昧なところもまるでテキストのように理解が深まります。
日商簿記2級の頻出パターンに加えて工業簿記の範囲までカバーしており、さらに模擬試験問題3回分も掲載されています。これ一冊で問題解答だけでなく、模擬試験まで行うことができるのでコストパフォーマンスに優れた教材となっています。
Amazonで試し読みができるので是非ご覧になってください。
TACの合格トレーニングで網羅的に簿記2級をマスター!
テキスト同様、個人が監修しているものよりも、大手予備校講座が監修しているテキストを選ぶならば、一般にも販売されているTACの問題集がオススメです。
こちらは先ほどの「合格テキスト」ではなく「合格トレーニング」となっているので、混ざらない様注意してください。こちらも商業簿記と工業簿記の2冊構成となっています。
本試験形式問題集
従来の過去問題集にあたる教材です。直前期のアウトプットにお使いいただけます。
簿記2級の場合、細かい部分まで学習しなければ合格できません。コンパクトにまとまっているものではなく、専門学校とほぼ同じボリュームの書籍を選ぶとよいでしょう。
まとめ
ここまで、独学で簿記2級を合格するために必要な学習方法をお届けしました。
簿記2級は難しいので、何度もインプットとアウトプットを繰り返す
簿記2級では、工業簿記と商業簿記を同じペースでバランスよく学習する
独学者向け教材は、インプットとアウトプットがシリーズ出版されているものがおすすめ
簿記2級は、資格予備校の生徒でも講義についていくだけで精一杯でトレーニングまで手が回らないという方も多いです。それだけ分量があります。
独学だからこそ、量をこなすことを意識して学習を進めることが大切です。
資格くじら先生!よくわかりました!ちょっと頑張ってみます!
その調子じゃ!モチベーションを維持して頑張るのじゃ!