資格取得

日商簿記2級が3級より選ばれる理由とは?2級のメリットと他級との違いを詳しく解説!

簿記2級が選ばれる理由
本記事で解説していること

日商簿記2級が、簿記の中でも高い人気を誇る理由を解説しています。3級および1級など、他級との違いや2級を取得するメリットまで、学習内容とともに詳しく解説しています。

簿記にはスタンダードな基礎を学ぶ3級、難易度がその一つ上の2級、難関の1級とあります。

基本的に社会に出ると求められるのは「簿記2級」以上の資格であり、取得して価値がある資格の一つとして昔から不変の人気を誇っています。では、なぜ簿記2級が選ばれるのでしょうか?

本記事では、簿記2級をついて解説していきます。次のようなお悩みがある方は是非ご覧ください。

  • 簿記3級に合格したから簿記2級にもチャレンジしようかな?
  • 簿記2級はどうして需要があるのか知りたい
  • 簿記2級の学習はどのような内容?

簿記自体をを学ぶ理由やメリットについて知りたい方は以下の記事で紹介しています。

是非こちらの記事も併せてご覧ください。

簿記における級数の違い

はじめに、簿記の級数によってどのような違いがあるのか、ざっくりとご紹介します。

出題科目の違い

出題科目と時間、配点は次の通りです。

【簿記3級】
  • 商業簿記(100点満点)の1科目
  • 合格基準は70点以上
  • 試験時間は60分
【簿記2級
  • 商業簿記(60点満点)工業簿記(40点満点)の2科目
  • 合格基準は70点以上
  • 試験時間は90分
【簿記1級】
  • 商業簿記(25点満点)
  • 会計学(25点満点)
  • 工業簿記(25点満点)
  • 原価計算(25点満点)
  • 試験時間は180分(商業簿記・会計学90分+工業簿記・原価計算90分)
  • 合格基準は、4科目すべて10点以上の得点があり、かつ総合70点以上

簿記2級は、簿記3級と簿記1級の中間に位置します。しかし、実際の学習レベルや教材のボリューム感としては、それぞれ差があると思ってください。

10階建ビルに例えると、簿記3級が1階、簿記2級が2階〜5階、簿記1級が6階から10階+屋上といったイメージです。

https://shikaku-antenna.com/accounting/bookkeeping/b-3/textbook-for-b3/

直近の合格率

それぞれの合格率と社会人の平均的な学習時間は、以下の通りです。尚、2018年度~2020年度に行われた7回分の平均合格率を記載しています。

簿記の種類合格率社会人の平均学習時間
簿記3級40%台後半100時間前後、短い人で2ヵ月前後
簿記2級20%台前半300時間前後、短い人で5ヵ月前後
簿記1級10%前後600時間前後、短い人で10ヵ月前後
参照:日本商工会議所HP『受験者データ』

簿記2級と簿記1級の合格率は、基本的には、前級の合格者が受験している中の数値です。難易度としては高いといえるでしょう。

平均的な学習時間に関しても、もう少し短いという情報も見受けられます。カリキュラムを一巡終えるには上記から2割減が目安となるでしょう。上記は、学習者ではなく「合格者」が必要とした時間と思ってください。

出題内容の紹介

それぞれの簿記の出題内容を確認しましょう。簿記1級は最も学習ボリュームがあります。

【簿記3級・商業簿記】

主に対象は、小規模企業です。

  • 簿記の基本
  • 商品売買
  • 固定資産
  • 決算整理
  • 財務諸表

などを学習します。

【簿記2級・商業簿記】

主に対象は、中小企業です。簿記3級までの内容に対して、

  • 有価証券
  • 無形固定資産
  • リース取引
  • 外貨建取引
  • 税効果会計
  • 株主資本等変動計算書
  • 連結財務諸表

などの学習が加わります。

【簿記2級・工業簿記】

主に対象は、中小規模の製造業です。

  • 工業簿記の基礎
  • 原価計算
  • 帳簿組織
  • 費目別計算
  • 損益分岐点の分析
  • 原価の予測
  • 営業コスト計算

などを学習します。

【簿記1級・商業簿記と会計学】

主に対象は、大企業です。簿記2級までの内容に、次のような学習が加わります。

  • デリバティブ取引
  • キャッシュフロー計算書
  • 株式分割や移転
  • ストックオプション
  • 連結会計での税効果会計
  • 在外子会社財務諸表換算
  • 会計基準
  • 財務会計概念フレームワーク

など、勉強内容は多岐に渡ります。

【簿記1級・工業簿記と原価計算】

対象は、大規模な製造業です。簿記2級までの内容に、次のような学習が加わります。

  • 機会原価
  • 高度なCVP分析
  • リニアプログラミング
  • 事業部測定
  • 営業費分析
  • 差額原価収益の分析
  • 戦略的な原価計算 etc.

級が上がるにつれて、学習内容自体もよりレベルアップしていくのが分かります。

簿記2級のメリット – なぜ需要が高いのか

ここから、簿記2級の需要が3級に比べて高い理由を解説します。

なぜ需要があるのか

まずは、就職や転職の視点で見てみましょう。簿記を直接使う仕事として、

  • 公認会計士
  • 税理士
  • 経理職

などがあります。一方で、簿記が関連する仕事となると、

  • 会計事務所、税理士事務所アシスタント
  • コンサルティング
  • 管理職

など、これ以外にも数えきれないほどの職種があります

上記は、ほんの一例です。簿記の知識が役立つビジネスは、その他にもたくさんあります。簿記2級の資格は、会計やコスト計算に関する知識を有する証明となります。企業側にとっては、わかりやすい判断材料になるので、常に一定の需要があるのです。

国内企業と簿記2級の関係

日本にある企業のうち、中小企業が占める割合は99%を超えています。簿記3級だと、小規模なビジネスシーンでは役立ちますが、もう一歩スキルがあれば業務の幅が広がるといったところでしょう。簿記1級は大企業を対象とした学習なので、そこまでの知識がなくても、簿記2級で通用する場面が沢山あります。

簿記3級、簿記1級と比較すると、簿記2級で学習する対象は、中小企業のため、ほとんどの企業でその知識やスキルが活かせると言えます。簿記2級が、多くのビジネスに活かせることがわかっているので、簿記2級にはそれに見合う価値があるのです。

税理士を目指す場合

「ビジネスに役立つ」というお話をしてきましたが、さらに上を目指した税理士受験について触れておきます。

税理士試験には、受験資格が設けられています。大学で、税理士試験に必要な単位をとっていない場合は、簿記1級合格または全経簿記上級合格(全国経理教育協会主催)が受験資格として認められています。簿記1級へステップアップするには、簿記2級をマスターしなければなりません。税理士を目指す上でも、簿記2級は重要な資格です。

同じく会計職である、公認会計士試験については、受験資格はありません

受験資格はありませんが、最低限、簿記1級までの知識が身についていなければ合格には至らない試験です。公認会計士を目指している過程で、多くの人が簿記検定を受験します

簿記1級に合格すると、税理士試験の受験資格を得られます。そのため、膨大なボリュームのある公認会計士試験に挫折した場合、税理士試験に目的チェンジすることが可能です。

いずれにしても、簿記2級の知識を得ることはこれらの資格取得の登竜門となります。

簿記2級の学習内容

ここで、商業簿記と工業簿記、それぞれどのような学習をするのか紹介します。

商業簿記と工業簿記は内容が被っている部分もありますが、明確な違いがあります。

商業簿記で学ぶこと

簿記2級における、商業簿記の学習内容をピックアップします。

商業簿記は、商品やサービスを提供する業種で、財務会計を行うために用いるビジネススキルです。財務会計は、決算報告など「企業の外部」へ見せる会計であるとイメージしてください。

例えば、次のような知識を習得します。

満期保有目的債券の利息を計算する

満期保有目的債券というのは、満期が到来するまで保有する債券です。満期に至るまで、毎期一定の利息を受け取ることができます。企業は利息目的に保有するので、決算における時価での評価はしません。その代わりに、償却原価法という計算方法で算定した価額を、貸借対照表に載せます。

会計処理そのものを学びますが、時事ニュースに登場する決算書、有価証券欄を見るのが大変面白くなります。

本支店会計を習得する

本店と支店をもつ企業では、それぞれが帳簿記入を行うパターンと、本店だけで帳簿記入を行うパターンがあります。

このような事業形態で必要な会計処理を学習します。

連結財務諸表を作成する

親会社と子会社をもつ、グループ企業の会計が論点です。それぞれの企業が決算を行い財務諸表を作成します。

その財務諸表には、グループ企業内の取引による売上高が含まれます。つまり、グループ全体としての利益が出ているかどうかは、個別財務諸表からは判断できません。そこで、グループ企業内取引で生じた利益は相殺し、連結会計を行う必要があるのです。

この様に、親会社と子会社の個別財務諸表を合算するための会計処理を学習します。問題を見ただけでも、どう処理しようかとワクワクする内容で、商業簿記の醍醐味でもある題材です。

工業簿記で学ぶこと

簿記2級における、工業簿記の学習内容をピックアップします。

工業簿記は、材料から製品を作るメーカーなどが、管理会計を行うために用いるビジネススキルです。管理会計は、経営管理など「企業の内部」を分析する会計であるとイメージしてください。

例えば、次のような知識を習得します。

製品1個あたりの原価を計算する

製造には、材料費・労務費・経費がかかります。このコストを、直接費と間接費という原価計算上の区分にもとづいて記録・計算します。さらに、導き出した間接費を、適切な方法で製品の原価に含める計算をします。

この間接費の計算(配賦)には、決まった方法があり体系的に学習します。

さまざまな原価計算スキルを習得する

個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算などの技法があります。

製品や業態の特徴にあう方法を適用し、計算することを学習します。

損益が分かれる時点を分析する

CVP分析という大変おもしろいコスト計算で、意思決定に関連する分析技法です。製造費用(Cost)、販売数量(Volume)、利益(Profit)の関係を計算します。

いくつ販売した時に、もとをとれるのかという計算です。CVP分析の問題が大好きという受験者が多くみられ、簿記2級をやってて良かったと思える題材です。

簿記2級に挑んで損はなし!

簿記3級に合格した人が簿記2級にチャレンジすることに、デメリットはないでしょう。なぜなら、簿記3級を高得点かつ、短期間で独学合格できた人は、簿記2級も独学で学習できる可能性があるからです。

教材は、簿記3級で使ったものと同様のシリーズを選ぶと良いでしょう。想定外に難しいと感じた場合には、改めて通学講座や通信講座に申し込むのが効率的です。

実務に活かせる会計用語や考え方に触れるので、スキルアップ目的としても役立ちます。学習を進めていくこと自体に損はありません。

まとめ

簿記2級が選ばれる理由とメリットなどを解説しました。

  • 簿記3級知識をもとに、簿記2級はチャレンジできる
  • 簿記2級は、社会的評価と充実した学習内容を併せ持っているので需要がある
  • 簿記2級の学習には、商業簿記と工業簿記があり中小企業で役立つ知識を学べる

簿記3級で点在していた知識が、簿記2級の学習が進むにつれて線となり形をつくっていきます。簿記3級で理解不十分だった部分も、霧が晴れたようにクリアになります。

簿記2級の学習は、商業簿記と工業簿記ともに本当に面白いと感じるようになるでしょう。興味のある方は是非チャレンジしてみてください!

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