簿記を初めて学習する人にとって、2級と3級の違いを把握している人はかなり少ないと思います。どのような違いがあって、何から学習していいか迷う方もいるでしょう。
本記事では、次の項目にフォーカスして情報をお届けします。
- 簿記3級から始めないとダメ?
- 簿記3級と簿記2級ってどう違うのか知りたい
- 簿記取得のメリットとは?
- それぞれどのような学習内容なのか知りたい
前半では、簿記3級と簿記2級の違いや、そのメリット・デメリットを紹介します。後半では、簿記3級がどのような内容になっているのか、紹介します。是非最後までご覧ください。
簿記検定は3級が基礎
まず簿記の概要をお伝えすると共に、簿記3級が基礎として大事である理由を解説します。
簿記とは?
簿記とは、帳簿記入の略です。企業の財政状態や、経営成績を表す財務諸表とよばれる書類を作成するためのスキルです。
売上や経費の資料を見る力がつくことで、さまざまなビジネスシーンに活かすことができます。例えば、
- 経理事務スキル
- 経営マネジメント
- 投資判断能力
- 利益管理
- 予算実績差異分析
など、実務に役立つというのが簿記の魅力です。
簿記2級の資格的価値は大きい
企業が求める簿記能力は、簿記2級からといわれています。なぜ簿記2級なのでしょうか?
それは、中小企業の会計や各数値が理解できる人材だからです。
経理の自動化ツールが導入されていても、システムにプログラミングされていない取引は発生します。その場合には、簿記の知識を活用して人が会計処理を行う必要があります。
また、簿記の学習は、公認会計士や税理士などの会計エキスパートの登竜門です。その他、会計職以外のビジネス資格にもつながりがあります。たとえば、FPや社会保険労務士、中小企業診断士にいたるまで、簿記の知識が役立ちます。
簿記2級は、さまざまな仕事や他資格にもつながる価値のある資格なのです。
簿記3級は独学で学ぶ事ができる
簿記3級は、独学合格が可能な資格です。
ただし、独学だからこそ基礎知識を理解できるまで、テキストと問題集を繰り返しましょう。しっかりと自分の知識にする必要があります。すぐに受験を考えていない人も、ぜひ、書店などで簿記のテキストを手に取ってみてください。
簿記3級と2級の違い
次に、簿記3級と簿記2級の違いなどをお伝えします。
簿記は2級から学習できるか
よく「簿記3級を飛ばして2級から勉強できるか」と聞いてくる人がいます。
「簿記3級の学習内容こそ簿記のすべて」です。
学習した事ない方は、必ず簿記3級の学習から始めてください。
簿記検定の受験資格は特にありません。初受験で簿記2級に申し込むことができます。それでも、学習のスタートは簿記3級からです。
簿記は特に、基礎を丁寧に学習するべき分野です。簿記3級は簿記2級の土台となる資格です。
簿記3級学習を省くと、わからなくなるたびに簿記3級のテキストを読むことになります。敢えて飛ばして学習する事で、非効率的な状況に陥ります。
「簿記3級の学習をせずに、簿記2級を学習しても大丈夫?」→NGです。
「仕事で会計用語に触れてるので、簿記3級は飛ばしても良い?」→NGです。
簿記3級の合格率は、40%~50%で推移しています。簿記2級につなげるためにも、計画性と継続性をもってコツコツ勉強を積み上げる必要があるのです。
出題科目の違い
簿記3級では、商業簿記を学習します。簿記2級では、商業簿記と工業簿記を学習します。
- 簿記3級…商業簿記(60分)
100点満点中、70点が合格ラインです。
- 簿記2級…商業簿記と工業簿記(90分)
商業簿記は60点配点、工業簿記は40点配点、合わせて100点満点中70点が合格ラインです。
簿記2級は、商業簿記と工業簿記を同時進行で学習を進めます。ボリュームは、簿記3級の4倍ほどです。
簿記3級出題内容
【簿記3級・商業簿記】
小規模の株式会社を対象とした学習内容です。
- 簿記の目的
- 帳簿記入
- 伝票のしくみ
- 減価償却
- 決算整理
など、会計の基礎を学習します。
簿記2級出題内容
【簿記2級・商業簿記】
中~大規模の株式会社を対象とした学習内容です。簿記3級で学ぶ範囲をさらに深く学びます。
- リース取引
- 外貨建取引
- 株主資本等変動計算書
- 本支店会計
- 連結決算
など、簿記3級の内容に加えて、ビジネス全般に通用する内容を学習します。
【簿記2級・工業簿記】
製造業を対象とした学習内容です。
- 材料費、労務費、経費の計算
- 変動費と固定費
- 原価計算
- 原価予測
- 工場会計
など、材料調達から販売までの基礎を学習します。
簿記のメリット&デメリット
以上から、簿記3級や2級の違いがなんとなく把握できたかと思います。ここから、実際に簿記の資格にそれぞれどのようなメリットとデメリットがあるのか解説します。
簿記3級の取得メリット
簿記3級資格のメリットは、たくさんあります。なかでも代表的なものとして、
- 会計基礎知識を得られる
- 周囲からの信頼度があがる
- キャリアアップにつながる
- 就職や転職に有利
- 他の資格にもつながる知識が身につく
などがあります。簿記3級資格にデメリットは、特にありません。
簿記2級取得メリット
簿記2級資格の最大メリットは、ビジネスでの評価が高いことです。そのほかにも、
- コストを意識した仕事ができる
- 業務の幅が広がる
- 経理事務職にチャレンジできる
- 投資などに活かせる
- 就職や転職に有利
などがあります。簿記2級資格にもデメリットは、もちろんありません。強いてあげるとしたら、
- 学習量が多く時間確保がむずかしい
- 簿記2級とダブル受験には体力が必要
といった所でしょうか。簿記検定は連続した2つの級を、ダブル受験できます。
簿記3級が午前実施、簿記2級は午後実施です(ペーパー試験の場合)。そのため、同時に受験する場合は午後の簿記2級まで集中力を維持する必要があります。
簿記の仕訳について
最後に、少しだけ簿記3級の内容を紹介いたします。
簿記3級の学習内容
簿記では「勘定科目」と「ホームポジション」という概念があります。
勘定科目
勘定科目というのは、「仕入」「売上」「現金」「借入金」「支払手形」など取引を記録するためのパーツです。
ホームポジション
勘定科目は「資産」「負債」「収益」「費用」の各場所に属しています。この場所のことをホームポジションと呼びます。
たとえば、「仕入」という勘定科目は「費用」というホームポジションに、「現金」という勘定科目は「資産」というホームポジションに属しています。
これらを前提に、簿記3級で学習する「仕訳」について、もう少しのぞいてみましょう。
仕訳と取引の二面性について
発生した取引を「借方」と「貸方」に振り分け記録するのが仕訳です。
簿記の仕訳には「取引の二面性」という特徴があります。費用が増加すると同時に、資産が減少するといった考え方です。いくつか例をつかって解説します。
このように、借方と貸方という2つの概念から、取引の内容を把握します。家計簿のように、入出金のみを記録するのではないのです。これが、簿記の持つ二面性です。
簿記3級では、簿記の基礎となる仕訳の知識がしっかりと身につくはずです。
仕訳を制するものが簿記を制する
ここまで、ホームポジションや勘定科目、仕訳といった簿記独特の学習内容をご覧いただきました。
このような基本となる考え方にもとづいた、仕訳の練習や決算処理を簿記3級で一巡します。会計資格の頂点である公認会計士合格者でも「簿記3級がすべてのはじまり」と表現します。
「仕訳を制するものが簿記を制する」という事実を心にとどめた上で、簿記3級の学習を始めてください。
まとめ
簿記3級と2級の違い、学習の内容及びメリット・デメリット等を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。簿記の学習の基礎は3級からということもお伝えしました。
- 基礎になる簿記3級から受験するのがマスト
- 簿記3級と簿記2級は、科目やボリュームに違いがある
- 簿記資格は、仕事やキャリアの幅を広げる
- 簿記3級で、仕訳という簿記独特のスキルを学習する
本記事が、少しでも多くの人の簿記学習のきっかけになれば幸いです。